知的障害者施設太陽の家 (藤田 能成氏)

2007年4月28日 事業シーズ交換会 第2回
<<私は52歳で早期退職しました>>
 第一回DNO講座を受講しまして、今に至っております。今日は団塊世代のボランティアと社会貢献ということでお話をさせていただきます。まず自己紹介いたします。
 私は1949年生まれ今年3月で58歳です。52歳でリストラ早期退職いたしました。前々から55歳で早期退職して60歳以降の暮らしに向けて準備しようと考えていました。
<< 辞めた時、次の仕事何にしようかと考えました>>
 辞めてしまっては見たけど次の仕事を何にしようかと考えたとき、60歳以降の生活は福祉制度と付き合っていくことになるからその仕組みがどのようになっているのかを知ることができる仕事に就こうと考えました。
 
<< まず看護士、介護士の資格をとりました>>
 なにも知らないでその世界に入るのも不安でしたので、52歳で病院に勤務しながら看護学校に入学して看護を学び、55歳で現在の職場に就職しました。同時にNHK学園で福祉を学びました。とりあえず看護と介護の資格を取得いたしました。知的障害者更生施設勤務は今年で4年目を迎えています。石の上にも3年と申しますが、少しは福祉の意味が分かってきたのかなと思えるところにいます。
 
<<自分の人生ををひとつの仕事だけの経験で終わりたくなかった >>
 医療福祉業界前は29年間営業職でした。かなり疲れていましたので同じ仕事で再就職しようとは思いませんでした。『藤田さんは、全く違う職場によく思い切って入りましたね』とよくいわれます。自分でも根っこの部分はやはり営業マンだよなと思うことがよくあります。
 競争の世界からドロップアウトして今までと違う世界で自分の未知なる可能性を確かめたかったということと生産年齢をひとつの仕事だけの経験で終わりたくなかったということが福祉の仕事を選んだ理由にあるといえます。
 お互いがお互いを認め合って生きている喜びを共感しあう。競争とあまり縁のない世界で暮らしたいという考え方も理由のひとつでした。
 
<<団塊の世代のボランティアを考えてみる >>
 前段が長くなりました。今私が勤めている知的障害者更生施設の話しを通して、団塊の世代のボランティアを考えてみたいと思います。
 
<<太陽の家の基本理念は一人ひとりが太陽に>>
 社会福祉法人太陽の家の基本理念は『一人ひとりが太陽に』です。そこで働いている方、暮らしておられる方、関係する方々みんなが太陽のように輝いていこうよということを基本理念においております。
 施設では知的ハンディキャップを持つ20代〜70代の方まで男女各15名ずつ30名の方が暮らしていらっしゃいます。この施設の特徴としましては、障害者への理解を深めていただきたい。一般の方への理解を深めていただきたいということを主眼において、開放された施設として年間を通して学生さんや一般企業のボランティアさんや地域の方々を受け入れていることです。当施設は今年で開設20年目を迎えます。開設前の10年間、地元の反対運動にあったことで一般社会に受け入れられなかった理由を福祉業界の閉鎖性にあるのではないかと創設者は考えました。そこで施設を地域の人に開放しようと考え、ボランティアさんたちの宿泊施設や陶芸教室、裏山にはアスレチックコースを用意して一般の方々が自然と訪問していただける環境を整えていきました。
 
<<利用者さんが一般社会から隔離された場所で暮らしていること自体が驚きでした>>
 私は福祉施設といえば老人福祉施設以外は知らなかったわけですが、障害者施設には、知的障害者施設、身体障害者施設、今お話しがありましたけど視覚障害者の方の施設など障害をもっていらっしゃる方の施設がいろいろとあるということを知りました。
 私は、知的障害者施設に勤務して驚きの連続でした。利用者さんが一般社会から隔離されたような場所で暮らしていること自体が驚きでした。こんな世界があったのか。この方々とどのようにお付き合いしたらよいのかと思いました。実習にくる学生さんたちが障害者の方々と触れてまず思うことは『怖い』『なにを話してよいか分からない』です。私も同じでした。しかし、普通でよいのです。皆さん、本当に優しい方々ばかりです。
 
<<武家屋敷に宿泊して炭焼きや自然観察>>
 次に、施設に団塊世代がボランティアで訪問してどんなことが出来るのかということをお話いたします。施設では一般の方の宿泊施設を用意しています。通称“武家屋敷”と呼んでいます。お手元に配布いたしました花咲き山だよりにそこの写真が載っております。従来高級料亭として使われていた築100年以上の古民家を一般に開放し地域交流センターという看板を掲げてあります。それと同じ敷地内に一般向けの陶芸教室があります。施設の裏手に山がありましてそれを通称花咲き山と呼んでおります。そこで炭焼きや自然観察会 里山保存会など、ボランティア団体の方が利用されています。それから太陽の家ボランティアセンターではボランティアの入門場所として、一般社会との融和を狙っていく、気楽に参加できる体験プログラムも準備しております。企業の方、労働組合の方また学生さんの方、NPOの方海外の方も含めて、多くの方が利用されています。
 
<<入所者さんにどういう効果があるかというと、社会性が身に着く >>
 ボランティアさんの訪問が施設の入所者さんにどういう効果があるかというと、社会性が身に着くということにあるようです。訪問者の方と利用者さんと触れ合う時間や職員と意見交換会を設けた一泊二日で宿泊していただくというプログラムも用意されています。
 
<<5月の4日〜5日の花咲きまつり >>
 次にボランティアさん方が主催者となって開催される大きなイベントですが、5月の4日〜5日にあります。このイベントは花咲きまつりといいます。今回はDNOの櫻井さん、内田さん、開田さん、川股さんをはじめ8名の方が参加していただくことになりました。このお祭りは施設側主体ではなくボランティアさん主体の参加型のお祭りであることが大きな特徴です。余暇面のボランティアでは毎週土曜日にあるクラブ活動への参加です。お茶、陶芸、お花、音楽、スポーツクラブがあります。それから作業への協力があります。平たく言うと利用者さんの日中活動に参加して一緒に作業を行うということになります。これはウィークデイに施設へ来ていただいて、作業を通じて利用者さんと触れ合っていただき知的障害というものを知っていただくことが大きな目的です。利用者さんは社会で経験されている方々とお話しする中で大人としての社会性を見に付けていくことができますので 施設側ではぜひとも協力していただきたい活動に位置づけています。利用者さんは社会人の方と一緒に仕事ができるということをとても喜ばれます。施設では作業を通じて社会性を高めていくということに大きく効果があると考えています。
<<団塊世代定年後の社会貢献>>
 私たち団塊世代は年齢を重ねるごとに、社会福祉制度の活用を避けて通れません。定年後のボランティアは自己の社会的意義の再発見につながると書かせていただきました。多くの方が定年後は今までできなかったことをバリバリやるぞ! 今まで培ってきた経験を生かして社会貢献をするぞ!と言っておられます。
 
<<サラリーマンはその存在意義を定年という形で一時的であれ失ってしまいます >>
 組織の中で仕事を通じて自分の役割を確認して来たサラリーマンはその存在意義を定年という形で、一時的であれ失ってしまいます。この喪失のときの時間の使い方が意外と大事であり今まで生きてきた活躍してきた自分を振り返えることが出来る時間ではないかと思うのです。この時間を、俗世間と違った空間でボランティア体験することで これまでの自分を第三者的にみてこれからの自分を考えることができるよい機会になると思います。知的障害者施設に行って障害者の方々と付き合うと心が癒されると来訪されたかたはおっしゃいます。
 
<<多くのボランティアグループは10人いると8人〜9人は女性の方で、男性が浮いてしまう >>
 また、よく聞くことですが、多くの方が施設のボランティアをやってみようかと考えるのですが、どこに行き何をやったら良いか分からない。既存のグループに入りにくいということもあります。多くのボランティアグループは極端な言い方ですが10人いると8人〜9人は女性の方ですね。男性が少ないので参加しても浮いてしまうのも現実なようです。
 定年になると会社から離れたのだから社会資源を増やしたいとか楽しく自由に生きたいとかいろんなことを考えると思います。思い切ってボランティアをやると今まで暮らしてきたことと違う場面で自分の違った面が再発見できるのではないかと思います。
 なにかボランティアをやってみようか、社会福祉施設でもたずねてみようかお考えになったときは是非太陽の家に連絡ください。まず走り出してみる。そうすると何か生まれてくるのではないかと思います。
 
<<今までは子供のためとか奥さんのためとか会社のために、これからは自分のために>>
 社会人になってから今まで子供のためにとか奥さんのためとか会社のためとか考えて仕事に邁進されてきたとおもいますが、これからは自分のために自分を生かすという価値観をもって生きていくのも許されるのではないかと思います。
 
<< ボランティアの特徴である無償性ということを受け入れよう>>
 じゃあ すぐにボランティアが本当にできるのかよということになりますが、長い会社生活を超えて新しい生活に飛び込んでいくということはなかなか出来にくいかもしれません。現実にボランティアというのは女性中心になっているんですね。特に生活支援などは男性にはなかなか馴染まない。特にサラリーマンはボランティアは『ただじゃ出来ないよ』と仕事として考えてしまいがちで、ボランティアの特徴である無償性ということをなかなか受け入れにくいようです。でも、ボランティアは自主性が大事で、ボランティアが有償になってしまうと仕事になってしまいますから対等の立場で参加できなくなりますよね。
 
<<障害者の方々が社会的存在であるということを感じてもらうには男性のボランティアが必要>>
 他にもいろいろな理由があって男性がボランティアに入るということはなかなか難しいのでしょうね。 だけど、太陽の家のボランティアは男性の方でも行えることがたくさん有ります。先ほど発表された方から障害者の経済的自立というお話がありました。障害者の方々が社会的存在であるということを感じてもらう応援も男性のボランティア活動としてできます。例えば、日中活動で色々作業作品を作りますが、その発表の場提供や販売の場つくり提供も出来ると思います。お店をやっておられる方がいらっしゃればその場で使う、販売する、展示する等など作品を世の中に出していく支援も大きなボランティア活動です。日常活動の中で農産物を作るということは利用者さんにとって重要な仕事ですが、そこで生産された有機農産物の直売ルートを作ってあげるということもあると思います。
 昨年は早稲田地球感謝祭で施設の方が作成されたコーヒーカップの即売会を行いました。今後は大きくジョイントができればなと思っております。
 
<<団塊の世代が世の中を変えたというのは大きな錯覚>>
 自分達団塊の世代が成長し活躍できた時代は良くも悪くも日本が伸びている時代でした。私は思うのですが団塊の世代が世の中を変えたというのは大きな錯覚で、世の中の流れがありその大きな流れの波に乗っかっただけで団塊の世代が能動的に時代を創ってきたのではなく受身的に時代の尖兵としての役割を担ってきたのだと思うのです。
 
<<これからが団塊世代の本当の実力の見せどころ >>
 これからが団塊世代の本当の実力の見せどころではないかと思います。配布させていただいた資料に団塊世代の男性が太陽の家でできるボランティア活動をいろいろと書いてみました。今まで社会福祉とは関係ないと思っていた団塊の世代も後何年かするといよいよ福祉制度利用者の中核になります。
 
<<今までの高齢者と価値観が違うのであればその価値観を変えてゆくことが大事>>
 従来の高齢者と価値観が違うといわれている団塊の世代も2012年頃には年金受給者となり、やがて後期高齢者となっていきます。今までの価値観が通用しないということであればその価値観を変えてゆくことが大事だとおもいます。ボランティアを行ってみることで何か新しい価値観の発見をできると思います。加齢していくと自分の意思とは関係なしに俺には関係ないと思っていた次元に組み込まれていきます。身近な問題である高齢者福祉なんて知りたくない部分もあると思いますが将来自分達がおかれる立場を知る必要もあると思います。多くの方が一寸でもボランティアを通じて社会福祉制度に触れていただき 我々世代が息子や娘・孫の世代になにを残せるのかを考えて行動し、若いときみたいな生産活動はできないけれども出来る範囲で社会貢献する気持ちで活動したらきっと素晴らしい明日がくると思います。
 
<<是非、太陽の家へ遊びにきてください。>>
 是非、太陽の家へ遊びにきてください。詳しくは太陽の家ホームページをご覧ください。

 有難うございました。

 
 

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