NPO「みんなのおうち」外国人子女の日本語教育 (小林 普子 氏 )

2007年4月28日 事業シーズ交換会 第2回

(子供を育てながら人生どう全うさせようかの忸怩たる思い)
講演中の小林 普子氏  私は小林普子と申します。団塊の世代です。会社に勤めた後、結婚したのは31歳で結婚退職しまして専業主婦になりました。
  結婚して仕事を続けられなかったという忸怩たる思いがありまして、子供を育てながら人生どう全うさせようかなと、皆さん今考えていることを私は31歳の頃からずっと考えているのです。「何しよう、何しよう」とずっと眺めながら今まで来ているけれど、子供を寝かせながら専門学校に通ってみたりとか人の講演を聴きに行ったりとかいろんな事をしながら、あるとき突然自分の恩師がなくなったりとかいろんなことがありました。

(人の話聞いて学んでいる場合じゃない、自分で動かなければ)
 人の話を聞いて自分で学んでいる場合じゃなくて自分で何か動かなければならないなぁと思って、10年ぐらい前に子育て支援若い人達が子供を育てる支援をするという形でカウンセリングなど色々している中で、実際に現場に立ったりしました。

(新宿区の主催するボランティアのための日本語教授法)
 私は新宿に住んでいるのですけど、新宿区は30万人の中の10%が外国の方なのです。ですから外国に関係のある人が3万人いるわけで、子育て支援をする中で日本語が分からなくて子育ての情報が全く入らないという事を知りました。これってちょっと変だなと思いまして新宿区の主催する「ボランティアのための日本語教授法」を学びました。

(日本語ができない外国人の子育て支援)
 その講座が終わった段階で大久保界隈に在住する日本語が十分できない外国人のための子育て支援をしたいなぁと思いました。教授法を取った人達とボランティア団体を立ち上げようかとなり、「新宿虹の会」を立ち上げました。
  そんな活動をしだした折に、高田馬場で女子中学生が5歳ぐらいの男の子をマンションから投げ落とすという事件がありました。落とした側の女子はフィリピン人のお母さんで、言葉の関係で親子のコミュニケーションが上手く出来なくなっていたり、断絶とかいろいろあったと新聞にも大々的に取り上げられました。その事件があったことにより、これに対して国が何か手を打たなければならないという思惑があったようです。
講演資料の写真  そこで文化庁が実施している「親子日本語教室」というものを新宿区でやらないかということが区のほうに打診がありました。「親子日本語教室」というのは文化庁の肝いりで全国20箇所で行われていましたが、東京都ではどこも実施している所がありませんでした。新宿区のほうに打診があった時、外国人の子育てを支援しようという団体は私たちの団体だけだったのと、「ボランティアのための日本語教授法」の講座を卒業してボランティア団体を立ち上げたのは初めてだったという事で、その講座の委託依頼がありました。百万円なにがしのお金がつきまして、外国に関係のある子供が六割いるという区立大久保小学校を借り、月2回、乳幼児を連れたお母さんのための日本語を教えるという活動を始めました。
  子供を連れているために日本語を学ぶ機会が無い母親に託児付きという講座に、年度途中ですが百万円の予算がつきました。そのうちの半分がある団体へ行ってしまうという事で、これは天下り先の役人のためにやっているんじゃないかと勘ぐりました。しかし実際にはお金の無い私達には有り難い話で、講座実施をする事にしました。
  その予算の中で現実に動く私達には一銭も払えないと言われ、これは変だと思い、「何であっちに50万円も払って私たちには一切お金を払わないのか」と交渉して、一人頭一回の活動について2000円出すということで、講座実施をOKしました。
  文化庁の予算で2年間実施しました。2年間で国からのお金は打ち切りにこれからどうするかと考えた時、新宿区でも、学習者も一杯くるから打ち切るわけには行かないという事で、区からお金を貰え、今でも細々とやっております。一回出ると1200円は頂いているのですけど、講座実施の準備に日々費やす時間は大変なものです。

(日本に働きに来ている女性と日本人男性との間の子供たち)
 その活動の中で日本語が不十分な為に外国に関係のある子供たちが学校で勉強についていけない事を知りました。日本語が十分でなくて学校に放り込まれても、子供ですから日常会話はすぐに出来るようになり、自由に生活は出来る様になります。けれども授業にはついていけない子供達は殆ど高校に進学出来ません。その子供たちはどういう子供たちかといいますと、日本に働きに来ている女性が日本人男性との間にできた子供です。子供ができるとたいていの男性は逃げてしまって、これは日本の男性の責任と私は思っていますけど(苦笑)皆さんはそういう責任を負っていないと思いますけど。

(日本に働きに来て、ある程度収入を稼げる様になって本国から呼び寄せた子供たち)
 それから最初は子供を本国に置いて日本に働きに来て、ある程度の収入を稼げる様になったら、本国から子供を呼び寄せる。それは大体小学校高学年から中学生くらいに来ます。この年齢ですと日本語習得が高校受験までに間に合わないというのが普通です。現在まで「親子日本語教室」を続ける中でそのような現実を知り、それではその様な子供を支援して行かなければ、と思いました。ある意味日本に夢を持ってきた人達にがっかりさせるのも日本の社会としては心が浅いなぁと思いまして、そういう子供の教育支援をしようと思って去年の5月頃、教育委員会に掛け合いに行きましたが、けんもほろろ、教育長に「そうですかあなたやりたかったらばやれば」という感じで本当に冷たくあしらわれました。

(NPOみんなのおうちの企画)
 去年、区が区とNPOとの協働事業案を募集しました。上限500万の事業案で、5,6件募集しますという話がありました。「NPOみんなのおうち」で企画案を出しました。全部で事業案が50ぐら提案される中で5事業が採択され、その中の一つとして残りました。
  このNPOみんなのおうちを説明させていただきます。
  この団体はリスクを抱えた家庭を支援しています。例えばシングルで子供を育てている方あるいは子育てに不安を抱えている方に自然体験を通してみんなで楽しんで子育てをやろうよね、というのが「みんなのおうち」です。
  「NPOみんなのおうち」は新潟にログハウスを持っておりまして、その家をみんなで使い共同生活をしながら自然体験をします。リスクが高い家庭ということで外国人の家庭もリスクが高い家庭ではないかということで、「NPOみんなのおうち」のメンバーが日本語の不十分な子ども達への学習志援活動をしたいと言いながら実現できない私を見かねて、協働事業案を出しましょうということで協力してくれました。提案した事業案が採択されまして500万円の予算が下りました。19年度に事業を立ち上げることになりました。

(平成19年度新事業の実施 学習支援スタッフをつりに参りました)
 現在ココに何をしに来たかといいますと学習支援を6月から始めるのですが、その学習支援のスタッフとして一人でも二人でも引っかかってくれる人がいないかと思って、今日はつりに参りました。
 募集の要項に関しましては新宿区ホームページ(「外国人の子どもの学習支援」スタッフ募集)に載っております。
 新宿区には22の児童館がありまして、夜間は余り利用されておらず、児童館という事で児童の為に児童館を使うべきとの考えもあり、大久保児童館と榎町児童センターで週三回、七時から九時勉強を教えます。
  日本語と英語と数学と国語です。本来だったらもっと教科を教えたいのですけど日本語が十分でないと社会科あるいは歴史的なものは中々無理なもので、まず日本語、英語、数学を支援します。英語は日本人も中学校から取り組むということでスタートラインは同じで、其れほどハンデはないかなということで英語を取り上げました。導入部分の英語は簡単なので、それに対応する日本語も初歩的なもので、あいまって英語と日本語同時にマスターしてもらえるかなぁという事で取り上げます。数学は記号が万国共通だということで数学、文章問題はなかなか解けないので例えば「次の問題を解きましょう」という文章を理解できれば問題は解けるようになる。ということで英語と数学は点が取れる様になるだろうという思いです。点数を取れる事によって自信をつけてもらおうという思いがあります。
  今回は日本語と数学と英語に加え、難しい国語を持ってくるというのは、高校受験にあたって国語を0点にするわけにはいかないので日本語をマスターした先に国語を理解してもらったらいいかなぁという思いで、国語を採用しております。

(新事業スタッフ応募へのお願い)
 そこで皆さんにはお願いしたいのはスタッフとして皆さん方のどなたかにスタッフとして応募して頂きたいと、お願いに来ました。
  謝礼は本当にささやかな金額なんですけど足代を出します。ある方がスタッフ募集をネットに出してくれたら、石川県の方が私やりますといって手を上げてくれました。足代といったら石川県から来る足代まで出してもらえると思ったらしくて是非やりますといってくれたんですけど私の頭ではこの近辺に住んでいる方という前提だったものですから足代+安い夕食代と書いたら応募されてしまって、断るのが大変だったんです。一回、1500円で週3回来てくれれば良いですけれども、週一回なら来られるということでも良いですよ。条件としましては5月の7日と10日の日にお話させて頂きたい事と、5月の20日と27日に研修会をいたしますのでそちらのほうにはぜひ参加していただきたいと思います。と申しますのは、こういう子供たちの環境あるいは子供たちの状況は複雑なところがありますので、その辺のところを理解していただいた上で、子供に接していただきたいと思いまして、20日と27日には研修を受けていただきたいと思います。
  研修の内容については専門家の法政大学の山田泉先生に総論をやっていただきまして、中学校と小学校でそのような生徒さんに接している現場の先生からどんな指導をしているかということを話していただきます。10時から16時、途中1時間休憩を挟んで5時間、計10時間という研修です。是非それも受けていただきたいなあと思っている研修です。
  3月12日の朝日新聞にこの件については記事が載っています。 「親子日本語教室」については色々な新聞に取り上げていただきました。私のことについては団塊女性のボランティアみたいなことで去年の6月朝日新聞に取り上げてもらいました。どなたかお一人でも良いですから、あるいはどなたかお知り合いでも良いですから、この様な所でスタッフを募集している、このような事にかかわりたいなぁと思っている人に声をかけていただきたいなぁと思っています。

(男手が足りないボランティアの世界)
 先ほどどなたかが、ボランティアしているのは女性が多いとおっしゃっておられましたが、それはその通りで男性がなかなか参加されなくて力仕事のときとか男手が足りないと思うことがしばしばなんです。けれども、今回のこの事業については男の方にぜひ参加していただきたいと思います。

(外国人子供たちに必要なのは男の人の社会経験)
 と申しますのはいわゆる子供を育てるというようなものは自分の息子娘を育てるというもので、社会経験豊かな、あるいはどんな人生を生きていかなければならないのかなという経験をお持ちの方が接することによって、子供たちの一番大切な時期:人間形成の時期を日本という異文化でけなげに生きている子供たちに将来日本に来てよかったなぁと思えるような子供たちにしてやりたいなぁと思っています。
  日本がそのような人や子どもを引き受けられる様な懐の深い社会になってもらいたい、そうなるべきと考える中、厳しい競争社会の中をかいくぐってきた男性の方に是非、是非参加していただきたいと思っていますのでよろしくどうぞお願いします。

 

Copyright © 2006-2007 特定非営利活動法人『団塊のノーブレス・オブリージュ』

事務局   〒162-0045 東京都新宿区馬場下町9-8技研早稲田ビル5階
早稲田大学提携パソコンスクール PCビレッジ内  電話 & Fax 03-3207-0700  E-Mail:info@dankai.jp