障害者へのIT教育 品川での取り組み (福井 龍雄 氏 )

2007年4月28日 事業シーズ交換会 第2回

(私はDNOワーキング第1期生です)
写真を示す福井 龍雄 氏  こんばんは今ご紹介いただきました福井です。
 私は 早稲田DNO1期生でワーキンググループのメンバーに最初の頃に何回か参加させて頂きましたので、今もDNOのメンバーと云う事になっています、今回もそんなご縁で呼んでいただく事になったようでございます。
 今日参加されている方の中にも何人かお久しぶりにお会いした方が居られます。

 さて、私は団塊の皆様より少し先輩でして会社を退職して今年で3年目になります、現在は今日ご紹介させていただくNPOでのボランティア活動の他、早稲田のオープンカレッジの受講や、健康の為にテニスやスポーツジムに通う等で現役当時と余り変わらない位にスケジュールが埋まっています、収入の方は厚生年金と企業年金だけですが特に無駄遣いしなければ何とかやってきています。

(議論より実践が必要)
 皆さんが一番考えておられる定年後何をやるのか、と云う事を私も自分なりに考える為にDNOを受講しました、そしてワーキンググループに参加し皆さんと一緒に議論もしました。
 しかし、皆さんがこれから定年を迎えられるのに対しまして、私は2年前の時点で既に退職していました。従って私にとっては議論より実践が必要と思いました、そこから自分に何が出来るか、何がやりたいかを考えまして今のNPOを選び参加する事にしました。

(品川で障害がある方とか高齢者主な対象にIT講習をしているNPO)
 それでは私の参加しているNPO紹介をさせていただきます。
 私の参加しているNPOは品川区にあり、障害がある方とか高齢者を主な対象にIT講習をしているというグループです。(NPO法人しなやかネット)
 パソコン講習は定例的に月に5回実施し「心身障害者福祉会館」というところを借りて講習しています。
 もう一つはサポート相談です、寝たきりの方のお宅へ出かけましてパソコンを使えるようにセットし、障害に応じて使える補助器をセットし使い方をお教えする、ということをやっております。

 
(シニアITサポーターの養成)
 教える側の人数もいつも足りない状態ですので教える側のボランティアの養成もやっております。
 「シニアITサポーター」は、シニアの方にITを覚えてもらうときに我々会社を卒業したものがサポート側に回るという、サポーターを養成するということもやっております。

(アイマスクをして体験する視覚障害者への講習)
 このマスクをされている生徒さんは視覚障害の方への講習の為に、目が見えない方が普段どんな状態でパソコンを操作するかという体験をしているところです。
 サポートする側の人にもどうやれば、パソコンを操作できるのか体験していただかなければわからないということになります。
 そこそことかこうしてくださいとかもうちょっとといっても分からないわけですね。
 それをお互いに体験してもらいます。

(障害に応じた講習)
 どういう障害を持っているかということでいろんな障害ごとに、教え方というのは変えていきます。

 例えば視覚障害の方にパソコンを指導するには、視覚障害者が使いやすいソフトの知識と技術を持った方がやっております。

 聴覚不自由者というのはパソコンの使い方はそんなに不自由ではないということになります。意思疎通のやり方が手話通訳の方が補助通訳をしたり、パソコンの画面の中で文字入力を使ってチャット方式でコミュニケーションをとります。

 肢体不自由者の方も障害の種類によってキーボードが打てなくても、指1本でマウスのクリック・ダブルクリック・ドラッグ・ドロップが操作できる補助器具を使う事により、寝たきり状態の重度の障害を持った方でもPC操作が可能になります。

 知的障害の方、知的障害にもレベルがありますのでどの程度理解できるかを考えながらということになります。講習の結果の成果物を持って帰っていただくのですが、親御さんがとても喜びます。「内の息子がパソコンでこんなものを作った」ということで喜ばれます。

 高齢者シニアの方にとってはパソコンは大変なことですね。英語カタカナ表記ということで、私どもの中では最高齢90歳の方が通っておられます。初心者講習を4回くらい受けておられますが、熱意があられますので「一緒に5回目でも、6回目でもまたきてください」ということでやっています。

(障害を持つ方こそパソコンが必要)
 障害を持った方でもPC操作が可能になりメールで友達と連絡が出来る、ブログを作り日記を公開したり、インターネットで自分の障害に合わせた日常必要な物を取り寄せたり、最新の障害者にも使いやすいPCソフトを探したり、などが出来るようになります。
 障害の在る方がPCを操作できる様になると世界が一気に広がります、高齢者や障害の在る方、外出が困難な方達ほどPCを必要としていると思います。

(いろんな入力補助器を使用することからスタッフに対する講習が大事)
 私達のNPOはこういった補助機器を使う知識や練習をお手伝いする為に、私達自身が常に新しい情報を得る努力をすると同時に、操作方法等を学ぶ為に内部の講習会などを実施しています。
 現在はウインドウズ・ビスタが出たためにXPで使っていた各種の補助ソフトがビスタで使えるか、使い方が変わるかなどの勉強をしています。

(障害を持つスタッフが講師として活動)
 私たちのNPOの中にはいろんな障害を持つスタッフが居ます。
 最近実施しましたNECの社会貢献活動とタイアップしたシニアITサポーター講習会の中での彼らの活動をご紹介します。

(1) 口にくわえた割り箸で講習する手足不自由なインストラクター
 さきほど身体障害者の方がインストラクターとして参加していると申し上げましたが、この方はシニア講習のときインストラクターとして、講習をされました。
 手足が不自由なので彼は、キーボードを口にくわえた割り箸1本で操作を入力しております。
 彼の割り箸入力のスピードは我々の指でぽつぽつ打つスピードより数倍はやい、何よりも正確です。
 ご覧のように割り箸1本ですのでパソコンの操作にはCtrlキーを押しながら何かをするとか、Shiftキーを押しながら何かを押すとかaltキーを押しながら何かを押すとかありますよね、

 そういう両手を使わなければいけない操作が沢山あるのですが、そういうのはパソコンの中に補助機能がありまして、その補助機能を私はこう使っているんですよということを身をもって示しているということです。

(2) 親指一本で講習するインストラクター
 こちらの方は親指1本でパソコン操作ができるという特殊な装置があるのでこれを使ってやっております。
 今度はキーボードを使わないでもパソコンができるよというデモンストレーションをやっております。
 テンキーというデスクトップパソコンのキーボードの右端にある数字だけを使って操作をするというやり方です。
 そこの数字だけを使ってパソコンが操作できるというもののデモンストレーションです。

(3) 足でキーボードを操作するプログラマー
 彼は日常どうやっているかというと自宅では足で操作をしております。
 IT会社で勤めていると同時に、プログラマーという仕事をしております。在宅でありますが。

(4) 筋ジスのため寝た状態でPC操作する方
 この奥の方はスタッフの1員で筋ジストロフィーという全身の筋肉が動かないという状態でパソコン操作は指1本という状態でやっております。

(手の不自由な方はメモが取れないから頭で即時に覚えるすごいやつ)
 手の不自由な彼等は専門学校でパソコンスキルを学んでいます。
 授業でちょっとメモを取ると云う事が出来ない彼らはどうするかというと、その場で理解し覚えるという事になります。
 解らない事を彼らに質問すると大抵は即答で返ってきます。
 頭の中にキチンと整理して覚えているスゴイ奴がいます。

(パソコンによって世界が広がる障害者は同じ障害を持つ人へ強い使命感)
 彼らはPCのプロでもあり、専門学校を出てIT関連の会社で仕事をしている人も居ます。
 私自身はITスキルに関してはいつも彼らに教わる立場です、正に教えるのではなく教わっているのです。
 彼らは障害を持つ自分達がPCスキルを持つ事で世界が広がり、仕事をする事も出来る事を身を持って実践しています。
 彼らは自分たちと同じ様に、障害を持つ人達にPCスキルを教えてあげて世界を広げてあげるのが自分たちの使命だと思って頑張っています。
 タイトルでいただいた障害者にITを講習するということではなくて、障害を持つ方と供に勉強するということになりましたが、彼らと一緒に活動できる「しなやかネット」に参加できて本当に良かったと思っています。
 
 どうもありがとうございました。
 
 

Copyright © 2006-2007 特定非営利活動法人『団塊のノーブレス・オブリージュ』

事務局   〒162-0045 東京都新宿区馬場下町9-8技研早稲田ビル5階
早稲田大学提携パソコンスクール PCビレッジ内  電話 & Fax 03-3207-0700  E-Mail:info@dankai.jp